いつ決める?

ずっと以前、当時の上司に詰め寄ったことがある。

あることを、やるのか/やらないのか、それとも別の選択肢で行くのか。それまでも何度も質問してきたのだけれど、何度もはぐらかされていた。すでに現場は迷走し始め、グダグダになりかかっていた。なので、一体これからどうするのか、どれで行くのかはっきりしてほしいと、みんなの前で質問したのだ。

 

 「わかった。それは“今結論を出さないこと”に決めた」

 

出てきた回答がこれだった。

正直なところ、唖然とした。が、とりあえずこう突っ込んでみた。

 

 「では結論はいつ出すのですか?」

 「それも、今決めないこと、にする」

 

要するに、現状のまま放っておく、ということを「決めた」という単語を使った短文で説明した、に等しい状況だった。

 

 

 

決断というのは、いつも正しいとは限らない。人間がやることなのだから、間違っていることだってあるのは当然、仕方がないこと。なので、朝令暮改もやむなし。常にころっころ変わるのは、それはそれでどうかと思うが、考えたうえで決断し、それでも変えざるを得ない状況になったのなら変えない方がまずい。

 

だが、どこに進むか決めないというのは、そもそも力のかけようがない。それが何名もの課員やメンバーを抱えていたりする組織や状況では、各々の力のはいる方向がバラバラで分散し、効率化も何もあったものではない。スタートすらおぼつかない状況だ。

 

結果、上記の「今決断しないと決断した仕事」は、ほどなくして解散となった。チームや組織は解体され、社内のあちこちに分散することになった。

 

 

好況期や国全体が勃興している時などは、正直なところ、管理職/マネジメントが多少へっぽこであっても、“社会全体”が拡大しているので、それなりに何とかなったように見える。自分たちが多少沈んでも、それを補うくらい全体が底上げされれば、それでいいのだ。

だが社会が現状維持、もしくは不況で落ち込んでいる時こそ、管理職の力がもろに業績に表れる。管理者当人に現場仕事をする力があるかないかとは違い、メンバーの力をうまく使えるマネジメント力があるのかないのかといった、レバレッジを効かせる実力がどれだけ発揮できるかが、そのまま業績に影響を及ぼしたりする。

不況期こそ、(メンバー自身も頑張りを見せるところはあるものの)管理職の実力が、会社が左右するほどの影響を与える時もないはず。

 

 

話は最初に戻って、その「決断しないことを決断」した上司は、実はけっこうなお偉いポジションについているとも聞く。今年度の業績見通しが出たらしい。