判断は正しかったでしょうか?

「ハンバーグセットお持ちいたしました。こちらでよろしかったでしょうか?」

「メニューを繰り返させていただきます。○○セットおひとつ、Mサイズでよろしかったでしょうか?」

「この電球は、電球色、昼白色、昼光色とあるうちの、昼光色でよろしいですか?」

「こちら、漫画○○の10巻と11巻でよろしかったでしょうか?」

最近、あちこちで“確認”されることが増えているような気がする。

確かに、時には何かの間違いに気付くこともあるにはあるので、すべてが無意味だ、などと切り捨てるわけにもいかないのだが、それにしても多すぎやしないだろうか?

そしてそもそも、確認すべきところで確認を促されているというよりも、本来必要のなかったところでの確認事項ばかりが増えていないだろうか?

 

先日居酒屋で、注文した料理を手にしながらテーブルにあらわれたウェイトレスが、「このお料理、今お持ちしてよろしかったでしょうか?」などと聞いた日にはもう…。

もしそこでお客側が「駄目です。」と冷たく言い放ったら、その手に持っていた料理はどうなったのか、別な意味で非常に興味があるのだが。

 

 

いずれにせよこの風潮の陰には、責任を自分では引き受けない、相手に投げ返すかのような風潮すら感じられて仕方がない。

たとえば昔なら、漫画本を間違って(11巻を持っているにもかかわらず)もう一度11巻を買った、などという経験がある人はいるだろう。が、本、それも漫画はさすがに返品は難しい。シュリンクパックのままなら可能性はなくもないが、多くはしょうがない。自分で買ったのだから、と自分の責任として受け止める。

電球も、他はいつもはすべて昼光色でまとめているのに、たまたま間違って電球色を購入してしまうこともあるだろう。こちらは本に比べると交換してもらえる場合もあるかもしれない。が、パッケージを乱暴に破ってしまっていたりするともう仕方がない。これも自分で選択したのだからとあきらめるしかない。

それを、「もし店頭で確認してくれていれば、間違わなかったのに!」などというクレームを入れる人もいるそうだ。自分の準備不足や確認不足によって生じた不具合を、相手の(本来必要としない)確認としての責任に押し付けてはいないか?

 

店でも

 「メニューを繰り返します。○○1つ、△△1つ。以上になります。」

で、以前は済んだ。そしてもしもそこで間違いに気づけば、

 「いや、△△は2つです」

と言い添えればいいだけの話だ。

 

それを、

「メニューを繰り返します。○○1つ、△△1つ。以上でよろしかったでしょうか?」

と、“質問形式”で聞き返されなければ、訂正できるチャンスが与えられなかった、などとするのは、コミュニケーション力の不足以外の何物でもないと思うのだがどうだろう?

そこまでして“優しく聞き直してもらわ”なければ、反論したり、間違いを訂正したりすることができないとでも言うのだろうか?

 

いや、「…でよろしかったでしょうか?」と聞くこと自体、受け取る側の能力低下の面だけでなく、暗に“ここまでへりくだって確認してるんだ。もしあんたが訂正しなかったのなら、責任はそちらに移行してるぜ”という風に、“責任爆弾”のキャッチボールをしているような気がしてならない。

 

「確認はしたぜ。それで反論しなかったのはあんただw」

 

と。

 

 

少しまともなレストランや、気の利いたお店に行くと、そのような“不思議な”会話のやり取りはまずない。それは、ウェイターがきちんと、だれが何を注文したかのメモを取っていたり、お客の動きをきちんと見つめていたりと、十分に観察し、必要な情報は自ら入手しようとしていたりするという、本来彼らに割り当てられた仕事/責任を全うしているからだ。

だがそれでもミスは起きることもある。万一間違ったら、それは自分の責任。それはお店側もそうだし、そしてそういうところに来ているお客側においてもそうだ。がそこはサービス業、たいていお店側がかぶる場合が多い。

でも、それはそれでお客の側も、何が自分に非があり、何が十分なサービスなのか、きちんと理解されている間柄においての行動。無茶なクレームは自分の品格を下げることにもつながる。そしてそのサービスのやりとりが気持ちよくなされること自体が、上質のサービスとして感じられる。

 

すべてを言葉に表し、明文化して確認するというのは、少なくとも日本においてはあまり美しくないサービスとされていたように思う。そしてそれは、海外ではかなり上の階級の者でしかできなかったことだが、以前の日本では、多くの国民ができていた所作。これがある面での「国民のレベル」でもあったはずで。

 

そう考えると、国民の品位が低下してきているあらわれが、

「…でよろしかったでしょうか?」

に表れているようにも思える。

 

 

 

はっ!、ということは、そういうサービスレベルしか提供していない店への出入りが増えているってことか>自分 orz