リスクの取り方

ついこの間まで、デフレだデフレだと言われていたけれど、何となく実体の感じられない、けれど「気分」としては効果たっぷりの「アベノミクス」のおかげで、景気が盛り返し、インフレ傾向が見え始めている。

 

デフレのこれまでは、ほっておけばいつも以上に早く価値の下がる商品をどうやって価格を維持するか、もしくは価格下落に打ち勝てるだけのコストダウンを図るかにしのぎを削ってきた。

 

コストダウンの手段はいくつもあるけれど、原材料の低減と、人件費削減が主なところ。特に日本では、露骨な人件費の削減というよりも、「現場効率化」という名前での締め付けがなされたりする。

効率化を極めるなら、一人の人にいくつもの仕事をさせるより、仕事の切り替え準備やミスをなくすため、一つの専門作業を徹底的に行い、その作業効率を極限まで上げるというのがベストだろう。ある作業に関しては、何よりも/誰よりも早く、正確にこなすことができるということは、究極の効率化。いわばロボット化でもある。

これはロボットで代替する場合であっても、へたな汎用機は、あれもこれもできる準備をするがゆえに、大きく煩雑で動作も緩慢だったりすることもあるけれど、ある一つの作業に絞り込んだものは、サイズも小さく、動作も機敏であったりする。専門に特化するというのは、究極の効率化。

 

 

ただしそうした効率化は、ある意味での大きなリスクテイクでもあり得る。

もしかすると次の世代においては、その作業は一気に意味をなさなくなる可能性もある。テクノロジーの進化で全く違う手法が確立したり、違う部品が発明されることで、その仕事、そのサービスがなくなる可能性はなくはない。

そうなったとき、もともとその作業のプロフェッショナルはどうするか?その作業しかできなかったロボットの使い道はどうするのか?

 

…であるがゆえに、別の作業も学んでおくとか、別の動作ができるロボットにしておくなどという逃げ道を準備しておくことも、ある意味ではリスク回避手段であったりする。

結局、効率化というリスクテイクと同時に、つぎにそのリスクが発症した際にどれだけ回避プランが容易に発動できるか。そしてそれがどのようにうまく機能するかは、「リスクが発動しない間という短期においてその系を評価する」というシステムと、「リスクがまず間違いなく発動するであろう数年単位においてその系を評価する」というシステムの、評価期間の取り方にも白湯されたりする。

 

 

何事も、突き詰めすぎることで一気に突き抜ける可能性もあるけれど、それが多少なりともリスクである場合もある。効率効率とばかり言っているだけで、リスク側面を全く関知していない場合には、痛いしっぺ返しがまっていたりする。