ベースラインが揺れると

いくつかベースラインの話はできるのだが、今日はこのベースラインの話。

 

昨年比○%、という比較をすることがある。

が、これ、けっこう危険な比較の一つ。

経済指標においても使っていることあるので、まぁわかっている人/発表する側にとっては都合のいいツール、ではあるのだけれど、知ら占められている方からすると、とっても怖い事。

 

例えばこうだ。

 

架空の数値としての売り上げが

 5年前で 1億円

 4年前が 1億2千万円

 3年前が 1億5千万円

 2年前が 1億万円

 1年前が    5千万円

  今年が 1億円

という絶対値があったとしよう。

 

これは、

 5年前の売り上げ1億円をベースラインとすると

 4年前で「20%増」  (a-1

 3年前で「50%増」  (a-2

 2年前で「増減なし」(a-3

 1年前で「50%減」  (a-4

  今前は「増減なし」(a-5

となる(すべて5年前との比較)。

 

同じ値で、前年をベースラインとして表現すると

 4年前で「20%増」  (b-1

 3年前で「25%増」  (b-2

 2年前で「30%減」  (b-3

 1年前で「50%減」  (b-4

  今前は「100%増」 (b-5

となる(すべて前年との比較)。

 

・(a-2,(b-2を見比べてみればわかる通り、ずんずんと増え続けている場合には、ベースラインの年をある年と確定することで、伸びている数値が大きくなる。

・同じく(a-3,(b-3を見比べると、(b-3では大きく減らしているように見えるけれど、(a-3では5年前の水準に戻ったということを意味しており、ブレークイーブンのイメージさえ醸し出している。

・秀逸なのは(b-4(b-5の変遷と(a-4(a-5の変遷の部分。a比較では減ったが増減なしにまで復活したことになるが、b比較では半減したにもかかわらず倍増した(が、5年前の水準に戻ったまで)という事を表している。何のことはない、やっと売り上げが元に戻ったにもかかわらず、100%増という目覚ましい成果に見える。

 

違う側面から考えてみよう。

 

5年前をベースに毎年10%の伸びで売り上げが上がっているとすると、

 4年前の売り上げ1億1千万円 (c-1

 3年前の売り上げ1億2千万円 (c-2

 2年前の売り上げ1億3千万円 (c-3

 1年前の売り上げ1億4千万円 (c-4

ここで経済ショックの影響で40%の売り上げ減となると

 今年の売り上げ1億円       (c-5

ということになる

 

これが前年比で毎年10%の伸びだとすると

 4年前の売り上げ1億1千万円    (d-1

 3年前の売り上げ1億2千100万円 (d-2

 2年前の売り上げ1億3千310万円 (d-3

 1年前の売り上げ1億4千641万円 (d-4

ここで経済ショックの影響で40%の売り上げ減となると

 今年の売り上げ8千785万円     (d-5

ということになる。

 

言うまでもなく、(c-5,(d-5の比較を見れば違いは明らかだ。

 

 

どの考え方にもウソはない。数値としてどことどう比較するか?というやり方も明確になっており、受け取り手がきちんと見極めていればいいだけの話。ではあるけれど、つい「自分が日ごろ使っている手法」として理解しようとして、その感覚的ズレでギャップを生じる。

聞き慣れない言葉は、ちょっと疑って…というところに隙ができるんだよね。