個別最適の夏

例年より早く「夏」に切り替わったらしい2013年の日本。梅雨前線の南側の太平洋高気圧に広く覆われることで来る季節、夏。

35度を超えるような日中、地域によっては39度越えの連日も。ただしこうした公式発表される気温は、いわゆる計測のための環境において測定されている気温であって、コンクリートにおおわれた都市部では、蓄熱された下からの照り返しも含めて、体感気温は多分さらに高い。

 

…なんて理由はどうでもいい。とにかく暑い!

暑い日が増えてくる、と、涼をもとめて今では普通にエアコンの使用を選択できる時代。何十年前ではエアコンの普及もまだまだだったような地域でも、今ではエアコンくらい十分に普及している。いくら原子力発電が止まっていても、気温が28度を超えると室内でも熱中症にかかる恐れがある。…ということで、メディアからは我慢して熱中症にならないように、積極的にクーラーを使いましょうね的なアナウンス。もちろん、オフィスの、各家庭のエアコンが稼働する。

 

夜でさえ25度を下回らない熱帯夜だったりすると、次の日に日が昇れば、瞬く間に28度を超えるのは必然。そうして夜もエアコンを使うのだから、外気が下がる時間がない。それは、屋内の温度を、エアコンを用いて屋外に“汲み出して”いるからだ。

いわば、“少しでも温度の低い、過ごしやすい環境”をあちこちに偏在させて作ろうとして各オフィス、各商店、各交通機関、各家庭において温度を汲み出す。暑い!せめて少しだけ涼しい場所を作らねば、自分たちのいる場所“だけ”でもとエアコンを回す。

 

たぶん50年前ならそうではなかった。エアコンの普及もさしてなかっただろう夏は、今ほど暑くなかったかもしれないし、暑かったとしても局所的に涼しくするために温度を汲み出す、言い換えれば、“周りに温度を汲み出して周りをさらに暑くさせるような装置”は、ほとんど存在していなかった。

 

“ここだけ”涼しければ、オフィスの環境だけはやっぱり少し快適にせねば、お客様には少しでも良い環境を…。そうして“部分”は涼しくなるかもしれないけれど、街は“全体”として暑くなる。エントロピー増大の法則には誰も打ち勝てない。

 

2013年。今年も個別最適の夏。