力が与えられたもの

昔でも聞いたことがある。

「新歓コンパの乗りで、大学前のバス停を、隣のバス停まで転がしていった」

とか、

「ポストにラーメンを食べさせていた」

とか、

どう考えても、当時であろうと今であろうと、犯罪と言われても間違いないほどのいたずらや、羽目を外す行動は、中高生、大学生にかかわらず、その世代のごくごく少数の者がやらかしていたこと。

もしかしたら、料理屋の厨房裏で、材料に悪さをしていた奴だっていたかもしれない。ただし、当時はカメラの普及も、ネットの普及もしていなかっただけの話。

 

当時でも、もしもばれたら、こっぴどく怒られただろうし、それなりの制裁を受けただろうとは思う。けれどその制裁は、その当人の人生をまるまる潰してしまうようなことではなかったんじゃないだろうか。まぁ長くて数年程度、そのうち忘れられ、若き日の過ちとして、笑い話の中に消えていく程度。

それに何よりも、そうして制裁を与えることができたのは、当時ならそこの責任者なり、その利害関係者のみ。関係のない者が、いたずらをした者に対して事実上の制裁を加えることはできなかった。

 

 

でも今じゃ、ネットを探され、完璧に正体を暴かれ、顔写真、住所氏名、学校、電話番号など、いわゆるプライバシーに関することを、これでもかとばかりに晒される。

もちろん、そんなことをされる対象にならなければよいのは間違いないけれど、そうして暴いている方は、たぶん、面白半分だったり。

でもそれは、事実上の私刑じゃないのか。

ネットという力を持ち得たことで、その力を誇示する対象として、私でも裁ける、という力を得たもののみができること。

 

ただし、その力は、多くの人が得てしまっているものであり、特別な物でもなんでもなかったりするのだけれど。

 

もしこれが、「情報攻撃ツール」という形で庶民に広がるのではなく、「物理的攻撃ツール」として、マシンガンや、ロケットランチャーが広がっている世界になっていたとしたら。