ウサギとカメ(2)

ある日ウサギが言いました。

「カメさんカメさん、あなたは歩みが遅いんですね。そんなに遅いと何かと不便でしょう。はっはっは :)」

そこでカメは言いました。

「いえいえ、そんなに不便なことはありませんよ。実は結構速いんです。なんなら私と競争してみますか?」

「じゃあ向こうの山のふもとまで、競争してみましょうか。ま、結果は明らかですけどね。」

 

そこで二人は早速競争してみることにしました。

よーいドン!

 

二人は同時に走り出しました。が、当然ながら、ウサギはぴょんぴょんと走って、すぐに遠くまで走り去るのに比べて、カメはのろのろと一歩ずつ進んでいきます。

ウサギはしばらく走ったところで後ろを振り返りました。ずっと後ろにカメの姿が小さく見えるかと思いきや、それさえも見えません。

しかしウサギは思いました。

「いやいや、世の中何がどうなるかわからない。今のうちに行けるところまで行きつかなければ。全力を出さなければ…」

 

息も絶え絶えになりつつ、ウサギは走り続けました。足からは血が流れ出し、身体はかなりきつい状態です。しかし走らねば、走らねば…。

 

もちろん、ウサギはぶっちぎりのゴールイン。

しかしゴールしたと同時に倒れこみ、意識を失ってしまいました。

 

かたや、カメはというと、一生懸命にゴールを目指していましたが、自分の限界も知っていました。何よりも彼はこう思ったのです。

 

「僕は何のために走っているのだろう?ウサギと競争している意味はなんだろう?」

 

確かに、速く走ることは一つの才能です。それを生かした何かを生み出すことができれば、それはそれで素晴らしい事です。けれどカメはカメとしての何かを目指してもよいのではないか?と考えました。誰と競うべきなのか、いや、そもそも誰かと競うべきなのかそれよりももっと大切なことはないのかを考えるに至りました。

 

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カメはレースを投げ出しました。そして彼が考える価値に乗り換えることにしました。他人の価値に乗るよりも、彼自身が考える価値で彼の周りを動かすことができれば、別にウサギのように早く走れなくてもいいと思い至ったのでした。