なまけものの行方

いつもの通勤電車。少し早い時間なので、まだ酒に酔った客などはいない。むしろ、これから飲み屋へと向かう乗客が、繁華街の最寄の駅で降りる、そんな時間。

偶然にも、目の前のボックス席の一つが空いた。仕事の疲れもあり、ありがたく座らせていただくことにする。

電車の中では、自分はたいていいくつかのPodcastを聞いていることが多い昨今。今回もあるPodcastを聞いていた。

 

ふと、本来は通過するはずの駅で止まろうとする列車。あれ?乗り間違えたかな?とも思ったのだが何やら車内アナウンスが始まる。どうやら人身事故が起きたらしい。しばらくは事故処理のため列車は動かなくなるという。

 

昨今の関東の列車網は、ひとつの鉄道会社の中での接続性を上げるだけにとどまらず、直通運転をも行って、長距離移動の利便性が良いものが多数生まれている。さらに、別の鉄道会社との乗り入れも工夫して、それまでなら何度も乗り換えてしか行けなかった場所に、乗り換えなしの一本で行ける、なんてのも、結構な本数がでている。

それもこれも、人の流れ、ニーズを勘案したうえで、接続編成やダイヤ編成を構成しているのだろうことを考えると恐れ入る。

ただしそれによる弊害も大きくて、思わぬ場所での事故発生が、全く関係がないと思われていた路線のダイヤに、影響を与えることも日常茶飯事。なので、あちこちのダイヤに乱れが生じるのが当たり前の昨日今日。毎日どこかでダイヤの乱れが起きている、なんてのが普通に感じる今日この頃。いや、それでも普通に運航できる、その運営力の底力には恐れ入るのだけれど。

 

で、そんな事故に巻き込まれた先日。立っていれば別の列車に乗り換える、などの判断もするのだけれど、偶然にも座っていたことで、まぁ座って待つかという選択肢を取れるようになっていた。幸い、時間に迫られる約束もない、聞きたいPodcastもまだ何本かストックがある。

 

車内アナウンスでは、10分に一度くらいは状況を説明したりもするのだけれど、たいていは情報価値が薄いものばかり。何分先にはめどが立つ、なんて情報は、そもそもはいってこない。時間にあせっていなければ、そんなこともお構いなしで、ゆっくりと周りの人々を眺めながら、Podcastを聞いている。

座っている人のほとんどはどうやら座りっぱなし。立っている人のほとんどが、振り替え輸送をもとめて車外へ向かう。

 

Podcast越しに、どうやら運転再開のめどが立ったらしいとのアナウンスが聞こえる。過去のこういう時に、振り替え輸送で必死で別の路線に移り変わろうとした経験もあるけれど、結果、あまりかわらなかったという体験をこれまで何度か繰り返してきた自分。そして今回の選択は待ち。案の定、数十分遅れではあるものの、電車は動き出せることに。

 

それまでは、けっこう満員で、人が歩くことができなかった車両だったのだけれど、乗り換えを目当てに出て行った人が半数以上で、ほとんど座っている人だけになった列車のドアが閉まる。静かに駅を滑り出す。

 

東京大阪間が、すでに新幹線で2時間半という時代。関東圏内を移動するためだけに2時間もかかるなんてのは、いいお笑い草だ。

 

Podcastではみんながケラケラ笑ってる。

外は寒い。