予約の取れない宿

冬。温泉、湯治なんてのは、この寒い季節にはおいしいキーワード。

つい先日が年末の休暇だったにもかかわらず、あぁ、温泉行きてーとか、どっか旅行に行きてーなんて願望がむくむく。

 

それなりにいい場所、いい宿があったとしても、行くのも大変なら、宿自体を予約するのも結構大変で。いい宿、食事がうまい、部屋が快適、温泉が素晴らしいなんてのを選り好みしていけばいくほど、もう、2、3カ月先まで予約がいっぱいなんてのはざらにある。

 

たまたまどうしようもなく現地で宿を探し、そうして泊まった宿。それがことのほかよかった、なんて話もなくはないのだけれど、少なくとも私はそんな経験がないし、私の周りでもそんな話は聞いたことがない。

 

泊まりたくても泊まれない宿。泊まりたくなくても泊まらざるを得ない宿。

 

先日そんな、泊まりたくても泊まれない宿に泊まってきた。なんせその宿泊施設は不定期に現れる。予約なんて取れない。わざわざ予約を取ろうというひとも、たぶん、一部のマニア以外にはいなさそうだ。

 

 

1月3日の夜、1泊。東京駅の15番ホームに停車中の新幹線。のぞみのグリーン車。室内のライトは消さないんだ。薄暗かった気はするけれど、人はなにかしら、パタパタと行き交っていた。

 

トイレに行くために普通車の方に向かうと、そちらは車両内の扉があいていた。あれじゃ寒いだろ。

別になんということはなしに、周りを観察。つかれて眠る人。おなかがすいて何か食べ物を探しに構内へ向かう人などなど、さまざま。さすがに騒ぎ出す人はいない。パニックなどにもならない。落ち着いた夜。

 

その車両は朝5時までそうして提供され、そこで一夜を明かした人は、おもむろに自分たちの最寄駅へと早朝の在来線で向かう。静かな夜明け。

 

泊まりたくても泊まれない。予約なんか取れるわけはない。

ちょっとドキドキの一夜。