変わりつづけることで

約1年前から考えると、大まかに言えば、1ドル90円程度だったところから、1割の円安で1ドル100円になっている昨今。若干揺り戻しなどもあるようだけれど。

為替以外のビジネス環境が全く同じだとするならば、いわゆる輸出企業は、黙っていたとしても1割売り上げが増えていておかしくない…はずだ。

事実、儲けを大きく伸ばしている会社もある。

 

ところが、他方売り上げが思うように伸びていない会社もある。なぜか?ひとつは、消費者の目として、買いたいモノがその会社から出ていないということがあるんじゃないだろうか?高かったから売れていなかったというよりも、高くても安くてもほしいものではなかった…かもしれない。

 

いわゆるオーディオ、ビジュアル機器を製造する企業として生業を立てていたところは、ある意味ことごとく今までの売り上げ規模が下がり、安くなり、それまでの企業規模を維持できなくなってきている。

テレビも、オーディオも、ビデオも、カメラも、全部デジタル化され、スマートホンの形に絡め取られる。GPSも取り込まれて、カーナビさえも必要がなくなる。

 

機器単体なら、もうスマートホンさえあれば構わない。もしかすると、ちょっと大きな表示装置は欲しくなるかもしれないが、基本機能はスマートホンで十分。時に音がいいとか、時に映像が美しいという外部取出しのための装置は必要になるが、それ以外はすべて取り込まれる。

 

他方、どうしても「サービス」に手を出したくない企業もある。

「どうして機器連動のサービスを出さないんですか?」

「そんなもの、一度始めたら辞められないじゃないか!」

こう言われた声が耳に残っているような気がする。いわば、それまでの長年のビジネススタイルを変えたくない、新たなビジネスステージをやろうと腹を据えて判断できる者がいなかったということだろう。

 

そうこうするうちに、AppleiTunesをはじめ、Googleが究極の無料サービスを次々と打ち出しユーザーを囲い込む。Amazonは一度抱え込んだユーザーには、事実上儲けなしで端末を配布して、その上のコンテンツ流通で日銭を稼ぐ。もう機器メーカーが単品売り切りで太刀打ちできるビジネス戦略の時代ではなくなりつつある。

 

もしも本当にビジネスのありようが変わってきているとするなら、すくなくともデジタルやネットワークに絡む事業は、20年前の事業領域イメージで支えられていたビジネス規模と比較して、今でもまったく同じ事業領域で支えられるビジネス規模は、小さくならざるを得ないんじゃないだろうか?

 

変わりたくない者というのは、イメージの中において「自分が変わらなければならないリスク」を恐怖に思っているのだろう。しかし実際は、そうして自分が変わらないことによって「周りの環境から置き去りにされて、相対的に大きく変わってしまっている課題」を背負っていることに気が付いていないのかもしれない。

 

変わらずにあり続けるために変わり続けなければならず、変わり続けることで、少なくとも同じ状態を何とか維持し続けられる。