リブート

ある技術的なブレークスルーを生み出したプロジェクト。当初は世界中、その生み出された成果をたたえ、皆が絶賛する。がしかし、二の矢、三の矢が次々に出せるとは限らない。そのプロジェクトは徐々に企業において重荷になってくる。

 

世間も追随する。トップを走るテクノロジーを持つ企業と同じ技術的なポテンシャルを持たない企業も、「あの路線なら売れるのか」と分かれば世間はなびき始める。

と同時に、本格的に技術開発も始まる。ブレークスルーを生み出した企業のライバル企業や、部品メーカーも、自分たちで何とかできるところはないか、売れ筋、時代の波に乗り遅れまいと焦りだす。当然、大学などにおいても方向性は同じだろう。同じ技術をより安く、もしくはより高度な技術を同じくらいかそれ以下の値段で実現しようとする。

そうして技術は水面下、もしくは水面に少し「鼻の頭」を表しながら、推移する。

 

大元のブレークスルーを生み出した企業は苦しい。以前なら企業内余剰を利用してなんとか細々とでもつなぐことはできたかもしれないけれど、昨今のような「余裕を極限まで削減する」という企業運営の下では、そのプロジェクトは維持し続けられなくなる。

仕方なくブレークスルーを生み出したプロジェクトはおとり潰しになる。社内では担当していた者と、潰したかったヘッドクォーターとの間でバトルも起きる。が、出た結果は結果。

 

おとり潰しになれば当然、それにかかわっていたエンジニアは別の仕事に割り当てられる。チームごと映る場合、個人個人で映る場合など様々。さらには、会社の中の別の仕事ならまだしも、その会社を辞めて他の会社に移る者も当然出るだろう。そうして社内、社外において、次の仕事に割り当てられた各面々。

 

それからしばらくして、「いや、あの技術はもったいなかったなぁ。また復活してほしいですね」などと言う意見が出る。社外から出るのは仕方がない。またやってほしいなと言う期待が言葉になっただけだ。

しかし物事はそう簡単にはいかないのは当然だ。

既に当時かかわっていたエンジニアは、新しい仕事、プロジェクトに組み込まれ、そのギリギリで見積もられたコスト(工期、コスト等)の中で、そこから外れることは難しい。昔のメンバーを集めるのは事実上無理だ。

 

おとり潰しが決まったプロジェクトは、もしも万一それを再度やるとしても、やはり0から始めるに等しい、あるいは、二度目は失敗できないと、一度目以上のプレッシャーがかかりもう一度リブートするのはとてもとても大変なのは言うまでもないことだ。

その事業が秘めているポテンシャル、その事業が内包している技術、その事業が運んでくるモチベーション、イメージ、気風、それらすべてをふくめて“おとり潰し”するのかどうか。ひいてはそれがもしかしたら連れてくるかもしれないその先の“未来”への道を含めておとり潰しするのかどうかを見極める。

 

その判断を任されているからこそのヘッドクォーター。だから高給取りなはずで。高給に見合うお仕事(ry.