コーチング

その一つのテクニックとして、相手にすべてを教えるのではなく、相手の口から答えを引きだし、それを実践させようとする。

現場を鍛える手法として、こうした手を使っているリーダーもいらっしゃることだろう。

しかし、「そう理解した上司」がその理解の上で、そもそもの上司と部下の役割分担をわきへ置いておいて、部下に何でも押し付け、それを部下の口から引き出そうとするという、トンでも上司がいたら。

 

こちらからの報告を聞いて上司が訪ねてくる。
「なるほど。で、君ならそれをどうすれば解決できると思うね?」
こっちもバカではない。相手がコーチングの一環として「そんな時には君ならどうすると考える?」などと言わそうとしていることは見え見えだったりする。そもそも、いくつか案を検討し、これもダメ、あれもダメとそちらがダメ出ししたのだから、もうこちらの手の内はすべて見せたつもりなのに、それでもまだこちらから答えを引き出そうとする。

 

こうした場合、その上司は「そもそも君の助けを出すつもりはない」というメッセージを発しているに近い。さらに、本来はその上司の仕事/役割のはずの内容を、そもそものその部下の口から出させることにより、自分の役目を押し付けていることが少なくない。

なにより、こうした間違った使い方/理解の仕方は、相手に気づかれていないだろうと思っていたところで、まず間違いなく相手に気取られている。

誠意をもって、本気で対処してくれているのか、そうではないのか、ということは、ちょっとした現場担当者は、敏感に察知する。

そのちょっとした「ギアのかみ合わせのずれ」が、やがて全体に大きく波及することになる。