ビジネス戦略

日本の「コンテンツ産業」特にアニメは、海外に売れると国を挙げての称賛ぶり。だが、褒める割にはそのすそ野は脆弱であったり、恵まれない労働環境が、夢というニンジンをエンジンに走らされている現状があったりする。

 

1960年代に手塚治虫が毎週1本のアニメーションを作り出すシステムを生み出してから約半世紀。いまだに日本では、毎週何十本というアニメーションを作り続けている。それで曲がりなりにも成り立っているのだから、この市場というか、制作システムの秘めたる力、情熱を感じざるを得ない。

50年近く前は、もうひとつの大きなジャンルがあった。それがアニメーション同様、毎週放映されていた特撮だ。ウルトラマンをはじめとして、毎週創造のヒーローがテレビを跋扈する。今でも細々とではあるけれど、仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊シリーズウルトラマンシリーズが続いていたりする。

単なる大人から見れば、アニメも特撮も子供向け番組ではあるのだが、実はこれらはそれぞれがそれぞれに、違うストラテジーでビジネスを展開していたりする。

 

誤解を恐れずに言うなら、「アニメ」はお皿(DVD、BD)やグッズを売ることを目指している。お皿はおいておくとすると、それ以外のグッズとは、いわゆるその手のキャラクターが書かれた商品を売ること。キャラクターそのモノに価値を見出してもらおうとする。

それに比して「特撮」は、おもちゃを売る。キャラクターにももちろん魅力を持たせなければならないが、どちらかというとその番組のヒーローになりきってもらったうえで、その「番組の中の道具」をおもちゃとして販売する。キャラクターとは少し違うのだ。

鶏が先か卵が先かはあるのだが、アニメにおいて、ロボットアニメ系が減ったこと、際立ったキャラクターアニメ(萌え系、かわいい系、ツンデレ系等々)が伸びているところからも、こうならざるを得なかったのかもしれない。

 

別にこれはコンテンツの世界だけでなく、見かけは同じような業態であったとしても、その儲けの出し方、ターゲットユーザーのしぼり方などが違うことで、厳しい市場原理の中で生き残っている業態が多数存在している。

逆に言うと、「今の経済環境に沿わないビジネス戦略」を変えられない企業が衰退しているといってもいいかもしれない。

 

ただし、いろんな意味で物事は循環する「ことも」ある。ファッションが何十年周期で回るかのように、ビジネスの流行りも無くはない。もっともいけないことは、そういう戦略があいまいで、打つ手が意味を見出す前に戦略がぶれてしまうこと。

しかし根本的に、戦略が無いのはまずい。あるとすれば何なのか?しばらくは我慢してあり物で、そしてそれで正しいのかを見据える度量、議論して良いものに磨き上げる自己研鑽が求められているだけにも思える。