木 林 森

すでに今年の関東でのその時期は過ぎたのだけれど、まだ東北の方はこれからだろうか。春は花の季節、特に桜の写真が増える。SNS時代になってから、皆さんがあちこちで桜を愛でたり、ご覧になったりするタイミングで、その時の写真が掲載される。

御多分に漏れず自分も見に行ったりする/したわけだ。ただ私の場合は、そんなに大人数でつるんだり、酒を伴うというのはあまり好まない。本当に花が見たいし、景色を楽しみたい。

 

そうした一人一人がとってくる写真に、桜並木や、木全体をとらえた写真がある。それはその全体の雰囲気が伝わってくる。

それに対して、それぞれにもっともっと近づいて、花そのものの写真や部分の写真も撮られることがある。けれど相対的にはこっちは少ないのかな?少なくとも私の知人たちの中では、集合写真や全体写真が多くて、草花のアップよりも、全体がとらえられている写真の方が多い気がする。

 

木を見て森を見ず、という言葉がある。個が見えていて全体を見ない、という意味か。どうしても人間は、自分の目の前にある事ばかりを追い求めがちになり、それを成し遂げればいいことにしてしまう。だがこれは「人のサイズ」で見た話。だからこそ、人の生活、日常から考えると、自分の目の前の「景色」をとらえることが多くなるのではないか?という気がしている。それに意味がないわけではないが、他の視点もあるではないか。例えばより近づいて、より小さな「個」を見ていますか?でもそれさえ実はひとつサイズダウンした視点から言うと、全体をとらえているにすぎず、さらなる個々がぼけていたり、とらえられていなかったりしませんか?

 

全体最適を考えるのはとても大切であり、重要ではあるけれど、それとは逆のベクトルとして、個々を大切にしたり、それぞれの個性を大切にしたり。

どちらかだけに偏る…じゃなくて、常に引いて全体を、常に近寄って個々に意識を持つこと。ほら、絵を描いている人が時々やるでしょ?対象物から離れてみたり近づいてみたり、自分のキャンバスから遠ざかってみたり。 ディテールを描き込んで見たり。