ズルいあいつ

ズル賢さには、タイミングが重要だ。

周りの誰もがやっているから、じゃぁ僕も…では、ズル賢さは成り立たない。

誰かに先んじて、自分だけ、というのがズル賢さそのもの。だからこそ、先に、率先して、ズルいことに手を出す。

 

全世界が見通せないような状況では、もちろんそれは、気づいたとき、思いついたときに、それを実行すれば良かった。そもそも見渡せない以上、それがズルいことであることにすら気づくことなく、実行するしかなかった。逆に言えばズルいということが分かるほど、最近は周りを見回せるような状況になっているという事。

 

そうして周りが見える中、ズルをすれば得をする状況が分かると、みんなズルをしたくなるのは当然の事。でもそれをしないのはどうしてか?といったことを解き明かしたのが、「囚人のジレンマ」という考え方だろう。

どこかで検索していただければすぐに出てくるが簡単に書くと、二人の囚人がいて、たとえば囚人Aに、相手(囚人B)の悪行を教えてくれれば、おまえ(A)だけは減刑して2年の刑のところを1年にしてやるぞ、と持ち掛ける。それをBにも持ち掛ける。となると、互いに2年の刑が減刑されるなら…と白状しがちだが、AもBも白状して両方の罪の裏が取れたら、AもBもお互いに2年の刑のところが5年に延びる。というのが囚人のジレンマだ。ともに黙って我慢するのが、両者全体で一番利益が高い。だから抜け駆けしないのが得策では?という考え方。ただし、抜け駆けするなら、自分だけ、一人だけ、一番初めに、というのが得策。

 

地球は今、狭い。通信網も交通網も出来上がっている。早いところでは、十数時間で、地球の裏側まで行きつくこともできる。大気もつながっている。水もつながっている。そんな中、一人だけがわがままを言ったらどうなるのか?

これから日本は梅雨を経て夏に。どうやら今年の夏は猛暑が予想されている。とは言え、シャツを着て上着を着ているダークスーツサラリーマンに合わせた冷房だと、薄着の誰かには寒すぎる。みんなで合わせて、クールビズなんて形で、全員が嬉しい形になるように全体のバランスを見て、さらに冷房設定温度を調整して、工夫をしていく。

それでもちょっと暑いなと思っている人はたくさんいる。でもそれを「皆が」実行した途端に、全員が不利益を被るから、ちょっとの暑さは我慢する。

 

ある国がパリ協定を抜けた。

 

「地球」という一部屋の中で、排熱を気にせず、クーラーをガンガンに効かせるやつらと生活することになるのだろうか?