蜘蛛の糸

カンダタは、蜘蛛の糸を手繰って天上界へ登ろうと。

ふと下を見ると、同じ糸を巡って、下からは何千人という人が押し寄せて。

結果的にカンダタの手のすぐ上の部分から「プツン」と切れて、皆はまた地の底に。

 

でもこれ、最近の日本の状況のような気がしてならない。

誰か一部の給料が上がりそうになると、それを引きずり降ろそうとしてみんなが下から引っ張って。結果的に下に合わせて日本全体がジワジワと沈んでいく。

ただしそうではないセレブ層もあるらしい。きっと魔法のじゅうたんでも手に入れて、糸に頼ることなく、ふんわりと天上界(高給)の世界に上り詰める。いったん登ればそうそう簡単には落ちたりせずに。ふわりふわりと雲の上。

地の底(庶民)に落ち込めばデフレで給料が上がらず、物価の上がらないことに喜びとまではいわずとも、これでいいかと諦めを感じている。自分が上がれないのだから、物価だけ上がってもらっても困るわけだ。逆に言えば、物価が上がれば給料も上がる…と誰も信じられない世界になったとも言える。

 

今天上界にいる人たちが、もっと庶民の事を考えたり、庶民の中から本当にすごい人をみんなで持ち上げたり。そうした相互に助け合うといった関係性が壊されてきたのが、このバブル崩壊後の20年なんじゃないかな。誰かが上がろうとすれば「低い方に」「みんなと同じつらい方に」「結果均等に」合わせる。

…じゃなくて、「高い方に」「より楽な人の方に」「機会均等に」合わせる世界に…は、なかなかなれない国なのかな。これだけ信じる事が損になる世界になってしまっては…。

 

でも、みんな一緒ならなんでもいい…ってわけじゃないでしょ。自分だけが良ければいい…って世界が良い世界でもないでしょ。しかしこの視点を持つ余裕が、無くなりつつある気がするんだよね。

つらいなぁ。