人手不足と効率化

知人と話をしていてこんな話になった。

「公になった数字の発表はあれど、一向に景気が上向いている感はないよね。労働人口も減っていくことが明らかになっている現在。そんな中において、リストラと称して、構造改革ではなく、明らかに単なる人切り、人減らしに走っている企業って、なんなんだろうね。ある意味でとっても贅沢な作業に見えるんだけど…」

 

少し想像するだけで見えてくるけれど、「今いる人」を、新たな切り口、新たなビジネスに振り向けることができなかった「マネジメントの失敗」こそが、昨今の景気低迷、企業業績低迷を生み出す大きな原因の一つと言うのは自明だろう。(その証拠…とまではいわないけれど、シャープの現状を御覧なさいな…。やっぱり今の時代のトップを張れる人材が日本の中にはいなかったのでしょうね、きっと)

 

そうしてリストラをしている割には、中途採用の流れが活発化している事実もある。

これがどういうことかと言えば、結果として「自前で教育して、人を育てるコストは賄いきれん。なので、すでに育った、成長した、即戦力だけ欲しいんだけど」という個別最適か判断の結果のひとつであろう。

 

日本企業の強みの一つとして、今はもう完全に崩壊したのが「終身雇用」。これはもちろん、デメリットの部分もあるのだが、メリットとして、就職した瞬間から、自前の社員をきちんと教育し、育てる…ということを進めてきたこと自体は、とても大きな力になっていたはずだ。にもかかわらず、今はもうほとんどが自前で育てることなく、育った果実を奪い合う。

 

ある意味、それくらい大企業であってさえ巨大なリスクにさらされている昨今。リスクに対する対処、ビジネス展開の勘所がきちんとわかって進めていけない事には、あっという間にひっくり返ってしまうという事だろう。

 

とは言え、だからと言って今の現状で、人を囲い続ける、雇い続けるほどの強靭な体力がある企業は少ないだろう。だから切らざるを得なくなっている。この先が見えていてさえ。

他方、今現在の仕事のうち、やがて5年後、10年後にはなくなっているであろう仕事というのも予想されている。AIの進化やロボットの進化などで、今の人手は必要なくなるのだろう。こうした効率化の恩恵は、働き手ではなく、株主に集まる。…だからこそみなさん株に投資してね…というのが昨今の風潮なのかもしれないが。

 

 

でも、基本は、やっぱり「働いて対価を手にする」でしょう。全員が投資家になる世界は、200年後にはすべてがロボットになっているのかもしれないけれど、ここ10年20年では来そうにないのだし。となるとやっぱり、手に職をつける、人間であることに価値がある仕事に逃げ続けるしかないのかな。

ただし、それは「自分が思う自分の価値」ではなく、「他人が思ってくれる自分の価値」を探しに行くべき…ってことのはずなんですよね。