「最適」の丸投げ

第二次世界大戦後10年ほど経った1955年頃以降から、日本は本格的にいろいろと復興してきたわけで、立ち上がり時期こそ貧しい時代が続いていたところはあったのだろうけれど、その後〇〇景気などというのが何度も訪れて、日本は世界に冠たる経済大国の地位を得た。

 

国民性も相まってだろう、日本は景気拡大で1970年、1980年代を迎え、やがてバブル期に突入。その後1990年代以降は、もはや失われた20年から30年近くも経済は停滞を続けている感覚を多くの人が持っているはずだ。

いや、統計的数字としては、もしかすると「数%成長」を続けているのかもしれないが、庶民感覚としてはいかがなものだろう?成長している感はありますか?たぶん1970年代などの、10年で給与が何倍にも増えていったであろうあの感覚をご存知の方は特に、経済が全く停滞しているかのように感じているのではないだろうか?

大学新卒の月給で比べてみればわかるはず。さて、この数十年で、いくら増えてますか?少なくとも何倍にはなっていないでしょ?

 

そうした経済状況、世界状況の中で、以前の先輩方の、以前上司だった方々の仕事の回し方、やり方をいまだに踏襲しようとしている人がいる。

暴論を承知であえて言いたい。数十年前の日本の経済成長期において、いわゆる管理職、マネジメントの仕事をまともにしていた人は、いったいどれほどいたのだろうか、と。もちろん、実行していた人もいるのだろうけれど、その時代、その時期においては、大した仕事をせずとも、周りの経済世界自身が拡大成長を続けているため、見た目、自分たちも成長しているという錯覚を持ったとしてもおかしくはない。そう、何も個々には効果のある事ができていなくても、パイ自体が成長していたため、そのおこぼれにあずかることができた時代だったはず。

 

それに比して、昨今は?というと、もちろん、世界規模で言えば成長している国々もある。インド、中国など発展目覚ましいところは、いわば古い日本のあの当時をなぞっているようにすら見える。だが、そこを主戦場としていないような日本企業は?日本の国自体、日本という経済のパイが大きくなっていない(成長がほとんど無い)ことで、停滞し、発展しなくなっている現状がある。

 

となれば、変わるべきは何か?それは対外的な仕事のやり方であり、以前の上司のやり方の踏襲ではなく、管理職が、マネジメントが、「本来の意味でのマネジメント」をやってこその成長のはず。…なのだが、できているのだろうか?

 

「残業を減らしましょう。」「高い生産性を目指しましょう。」お題目としては正しい。しかし、それらを労働者「個々人」にゆだねようとしている時点で明らかに間違いではないか?それを個々人のやり方にゆだねるとするならば、それぞれに生産性は上がるといった、いわゆる個別最適にはなりそうだ。が、まず間違いなく全体としての成果は上がる可能性は限りなく少なく、全体最適にはつながらない事になるはず。そう、「会社としての方針」や「業界」「国」としての大方針を決め、それに沿わせたうえでの「個別最適」でなければ、最適化、生産性向上などにはつながらない。

そのメッセージが明確に打ち出されておらず、各社のリーダー、上司などからも、いわゆる「最適の現場丸投げ」になっている時点で、大間違いのはずではないのか?

 

不満に思っている現場メンバーの方々、リーダーに聞いてごらんなさいな、マネジメントって何ですか?って。納得できる答えが返ってくるだろうか?実は「マネジメント」こそが、改革すべき中核なのではないだろうか?