相手の心に

コミュニケーションが非常にうまい人がいる。それも、自分の考え、思いを相手に伝えることが大変うまい人がいる。そんな人に話を聞いたところ、不思議な答えが返ってきた。

それは、「相手の心の中に絵を描くのだ」と。

 

その人は、何かを話すにしても、特段自分の中で「台本」が用意されているのではないらしい。自分の中に、そうなった状況、そうなっている場面が、映像として浮かんでいるというのだ。だから、何かを説明するときには、その場面、映像の中で必要なものに寄って見て、見えていることを話す。頭の中の場面において、必要な角度から近づいて、その状況を確認したことを話す。だからリアリティーもあるし、具体的に細部まで語ることができる。

 

決まった「言葉」で作られていないからこそ、「見た状況」をそこで言葉にする。だから見方によっては違う見え方をするかもしれないが、当然、一つの映像を多彩な角度から眺めなおしているだけなので、矛盾は生じにくい。

 

もしかすると、これは就活などでも必要なスキルかもしれない。面接官に質問された際にどうこたえるかを「想定台本」として用意し、暗記したことを答えようとしている場合は、それに対する別の質問を投げかけられた途端に行き詰まる。だが、その質問に即した「場面」が、映像として描けていたら、状況として心の中に場面があれば、どのような変化球の質問が来たとしても、見る角度を変えて答えればよいだけの話。

 

いかにして伝えるのか、いかにして話を聞くのか?話し手は映像を浮かべ、聞き手は相手の言葉から映像を構築する。これができると最高なんだが…