労働者と資本家

アメリカは、すでに富裕層の1%が持つ全資産が、それ以外の99%が持つ資産と同額…なんていう世界になっているとも聞く。そして、アメリカの施策を追う日本は、遅かれ早かれ、割合の大小はあれど、そういう世界に近づきつつあるのだろう。

一部の超巨額な資本家のみが潤い、それ以外は日々働くけれど、わが暮らし楽にならざり。

 

今の世界、労働者の資産形成における主たる戦略は「足し算」だ。今月、来月の給与から、節約した分を積み上げていく足し算。であるからこそ、歩みが遅いし、なかなか増えない。ちょっとしたリスク発生で、すぐに積み立てたいくばくかのお金は吹っ飛んでいく。

それに対して、資本家の考え方は、(多少の誇張はあるけれど)掛け算だ。いくらか投資は必要だけれど、その投資によって、大きなリターンを狙う。もちろん、失敗することもあるけれど、であるからこそ、成功した際のリターンも、大きいものになる。だから、何度かに一度リターンがあれば、それで増やしていける。

だから、労働者の側にも掛け算をやったほうがいいですよ、とサジェスチョンがなされる。それが株式投資であり、債券での運用だ。

昔は良かったらしい。一般市民であっても、株式などやっていなくても、そもそも銀行に入れている定期預金で、3%や4%の利率で増えていった。掛け算としての複利の利用が、一般市民が気にせずとも利用できた世界。

 

だが、バブル崩壊以降、預金の利率が1%を超えたところなど、記憶にある方はいるだろうか?たとえば、利率2%が定常的に続くなら、約20年で50%増しになる。0.02%なら、20年たったところで、1%も増えやしない。そう、低金利になったことで、自分から掛け算(株式、債券)に自分から近づいていかなければ、足し算の世界でのみ暮らさざるを得ないことになってきている。

 

だからと言って、皆が株式債券に乗り出そう!というつもりもない。特にこれだけリスク要因を様々に抱える世界の経済事情において、それらリスクに耐えながら資産運用すること自体が、大変困難な状況。

「だから俺は、地道に貯金して、地味に余生を過ごすのさ」

なんて言う人もいるかもしれないけれど、でもよく考えてみよう。個人的にはそうでも、もうすでに年金基金の一部は株式で運用されている。預金利率が低くなったことで運用が苦しくなった年金をもとに、株式相場で、掛け算効果で、年金を運用し始めている。すでに全国民が、リスクをとった掛け算手法で、将来の運営を試されているという事実。

…であるからこそ、個人的には、地味に行こうと考える人も、少なくなさそうなので。