声を上げているのは

以前いた会社では、社内で人材を流動化させる「社内募集」という制度があった。

「うちの部署ではこういうスキルの社員を探しています」
こういう求めに応じて、それに見合うであろうスキルの社員が自ら応募する。
応募に通れば、所属元の部署はそれを引き留めることができない。もしそんなことになれば、そもそもそういう取り組み自体が意味をなさない。が、当然出て行かれた部署は大慌てになることは必至。なので、元の部署は社員に対する仕事を含むさまざまなケアには気を付ける必要がある。…というのがその趣旨。

 

しかしよく考えてみれば、社内募集をかけている組織はどういう組織なのか?答えは二つ。ひとつは、今までのやり方で困っている、何等か人手が足りない組織。
もうひとつは、新しいことに挑戦しようとしている組織。そもそも、既存の枠からはみ出て、今までにない事をやろうとしている。だから人も集まっていない。そもそもほとんど始まっていないような組織。

後者はまだいい。世間がのぼり調子の時にはこういう組織はいくらもある。また、これから出ていくぞと言う波があるときには、こういう存在が組織全体を引っ張ったりもする。
しかし、のぼり調子でなければ、なかなかこっちは出てこない。
…となると、出てくる募集の多くは、ほぼ間違いなく困っている組織。
困っていないところは、さほど宣伝もしないし、売り込みもかけない。むしろ、よけいな人員を抱えたくない、邪魔が入らないことを目指して静かにしている。

 

ただ、会社は会社で新しい事業を起こしたい場合、いくつかそうした新しい組織が生まれたりもする。が、昨今の経済事情を考えると、そうした事業は早晩つぶれたり、吸収されたりする。多人数を抱えていても、整理されることが必至。キャリアを積めるくらいに存続させるのは難しい。
その時にはあたらしい仕組みで何とかするのと同時に、やはり根本的には新たな収益源、それは技術でも商品でもサービスでも。いろんなアイデアは出ているはずなのに、それが規模が小さすぎるからと取り組まないなどと言っていられるのも時間の問題。


やっと当時のアイデアがちょっと形になった、と風のうわさでは聞くけれど。遅きに失している気がしてならないのだが。