ホステスの夢

面白い話を伺った。

かつて景気が良かった頃。とある港町では、飲屋街がとても栄えたらしい。どこもかしこも景気が良くて、飲み屋のホステスももちろん“うなる”ほど稼げたそうだ。
 
彼女たちが持つ夢の典型的な一つが、「自分の店」を持つこと。お金を貯めていつかは自分の「城」を構えること。ある程度蓄えができてくると、目標が近付いてくる。
そうなると気になるのは場所だ。どこに出そうか?と。
 
当時は、近場で閉店した店が出たというのを聞きつけると、あっという間に看板がはがされ、すぐに改装されて新しいオーナーが店を開店したと言う。
前のオーナーが、店のカウンターやいす、水回りや皿、コップなどをすべて置いたまま閉店する。今なら、安く上がる、それらをうまく使ってなどと言う考えは浮かぶと思うが、当時の(今でも?)オーナーは違ったらしい。「自分の城」なのだから、自分の色に染めたいのだ。と言うわけで、当時の「内装」を請け負う工務店はウハウハだったらしい。まさに景気がいいとはこのことだろう。
 
そうして「自分の城」を構えたもとホステス。
前は1メンバーとしてホステスをしており、中でもトップクラスの売り上げを誇っていた。だからこうして店を開いた。
オープン直後は自分についていたおなじみさんも来るだろう。新しい店を構えたと言う事で、一度は行くか、ということになる。しかし、その後はどうだろうか?
 
言うまでもないが、以前どうして自分がトップだったのかは、「自分の実力」の部分と、「その店」という力の部分がある。その比率を、実力割合を読み違えると、自分の店を、「城」を打ち立てても、やがて店は閑古鳥が鳴き始める。
どうして?トップホステスだったのに、なぜみんな来ないの?
「その店」という要素と「あなたの実力」という要素。なかなか測ろうとしてもそうする手段がない。が、冷静にそれを見極めなければ大きく失敗する。
 
 
ある大手の会社の「部長」をやっていたからと言って、即転職が決まるとは限らない。それは仲間の実力に支えられて「神輿を担がれていた」だけかもしれない。それが外れてしまえば、ただの人だ。「あの神輿」がすごかっただけかもしれない。
いや、すぐに他の会社で活躍し始める人もいる。それは、「その実力」があったのだろう。
 
自分を冷静に見つめ、その会社、ブランドがはかせてくれている「下駄」の部分と、自分の「背の高さ」の部分とを冷静に見極める。
もし、自分の背丈が足りなければ、伸ばしておいた方がいい。すでに終身雇用制は崩壊している。