身体のないロボット

日本はかつて(今でも?)ロボット大国と呼ばれていた。工場などでの組み立て作業で、大量の組み立てロボットが導入されているのを見たことがある人はいらっしゃるだろう。これは欧米ではけっこう抵抗があるらしく、「俺たちの仕事を奪うのか!」といった理由からか、日本ほど入っていなかったようだ。

 

ただその「ロボット」が行っていた作業はというと、いわゆる単純作業、モノを運んで所定の位置に置くとか、何かをつかんで回す、ねじを締める等々の作業、いわゆる「事前に設定された作業」を繰り返し行うのがほとんど。センサーも付いているが、さいごのびちょうせいに使われることがメインで、その信号を元に、新しい情報判断を生み出すにはなかなか至らない。

 

そののち、自立して動き出すロボットが出てきた。ホンダのアシモがそう見えるけれど、けっこうあれは後ろで捜査していることもあったらしい。完全に自立したもので有名になったほぼ最初のモノが、最近リバイバルしたのでご存知の方も多いであろう初代AIBOソニーが発表し売り出した途端、瞬く間に話題となり人気商品に。

当時のAIBOも人に親しむ動作、学習をしていたようだけれど、それが今回リバイバルしたaiboではさらに進化しているらしい。

 

そんなaiboリバイバルも含めて、昨年後半あたりからキーワードに上りだしたのが、AIとかそれを冠したAIスピーカーとか。すでにアメリカではAmazonの商品がかなりの覇権を握っているらしく、自動車会社とも組みだして大きく勢力を伸ばし始めているらしい。もちろん、Googleもだまって見ているわけはなく、しっかりと対抗馬を繰り出しているし、Appleも出遅れたけれど、ホームポッドという形で、少なくともアメリカではローンチを開始した。ある意味、AIプラットフォーム戦争とも捉えられるだろう。

 

私の感覚としては、「AIスピーカー」という呼び名が今一つしっくりこない。なぜなら「スピーカー」という「話す」機能はもちろんあるけれど、当然そのために話を「聞く」マイク機能が搭載されていることが恣意的に?隠蔽されている。すでにスマートホンの時代からSiriを搭載してきているAppleとしては、たんなるSiriの据え置き版ではなく音にもこだわるという意味ではスピーカーなのかもしれないのだが、他もそうではないでしょ?ショボい音も…。

 

と、こうしてみると、マイク&スピーカーの機能を持った「スマートスピーカー」という商品がトレンドのようにマスコミは押し上げる。けれどその機能、すでに家庭にある別の機器に入っていれば、それでも事足りるのでは?とも思うのだ。わかりやすいところではテレビ。実はすでにGoogleのアシスタントが載っかったテレビは実在しているけれど、使えてない人が多そうだ。逆に「そうしたコマンドを認識する特別な存在」としての一台、という位置付けも、わからなくはないのだが。

 

こうしてみると、またまたシリコンバレー発、ソフトウェアテクノロジーに牽引された形で、AI市場が動き出している。日本がある意味苦手な分野とも言える。だがこれ、見方によっては「身体のないロボット」ととらえられないだろうか?

身体があれば/動き回るのであれば、その周りの状況確認のために、様々なセンサーが必要になり、複雑な条件判断が必要になる。が、動かないのであれば、まずは言語解析、言葉による判断に絞ることで、ソフトウェアで実現可能。さらに昨今のネット環境なのだから、「その機器自身」に全能力を搭載する必要はなく、インターフェイスとして受け取ったコマンドを(ある程度下処理はするのだろうけれど)クラウドの向こう、より強力なサーバーに送り、解析し、データを蓄積し、判断結果を返すという形にすれば、より強力なCPU、メモリーを使えるのは目に見えているし、実際そうやって処理されているAIスピーカーがほとんど。

 

日本は「身体」を作ることができる実力を持ってはいるけれど、AI、いわゆる知能部分(ソフトウェア部分)で後塵を拝しているのは否めない。これを吉ととるか凶ととるか。

これからも「身体」作りに邁進し、他の追随を許さない世界へ邁進するのか。いやいや、「頭脳」も大切なのか。いまさら「両方の覇権をとる」ほどの体力は、どこの会社にもなさそうなのだが。