ウサギとカメ(3)
ある日ウサギが言いました。
「カメさんカメさん、あなたは歩みが遅いんですね。そんなに遅いと何かと不便でしょう。はっはっは :)」
そこでカメは言いました。
「いえいえ、そんなに不便なことはありませんよ。実は結構速いんです。なんなら私と競争してみますか?」
「じゃあ向こうの山のふもとまで、競争してみましょうか。ま、結果は明らかですけどね。」
そこで二人は早速競争してみることにしました。
よーいドン!
二人は同時に走り出しました。が、当然ながら、ウサギはぴょんぴょんと走って、すぐに遠くまで走り去るのに比べて、カメはのろのろと一歩ずつ進んでいきます。
ウサギはしばらく走ったところで後ろを振り返りました。ずっと後ろにカメの姿が小さく見えるかと思いきや、それさえも見えません。
しかしウサギは思いました。
「いやいや、世の中何がどうなるかわからない。今のうちに行けるところまで行きつかなければ。全力を出さなければ…」
息も絶え絶えになりつつ、ウサギは走り続けました。足からは血が流れ出し、身体はかなりきつい状態です。しかし走らねば、走らねば…。
ウサギは体の変調に気づきました、が、止まってしまってはまずい、前へ、前へ。
カメはウサギに比べるともちろん歩みが遅い生き物です。スタートと同時にウサギにぶっちぎられてからも、彼は焦らず確実に歩み続けました。自分の信じる歩みで、自分の信じる速度で。
何日か経った時、カメはふと気が付くと、ずっと先ではあるモノの、ウサギがいることに気が付きました。毎日毎日ウサギは近づいてきます…いえ、カメがウサギに近づいているのです。
ウサギは息も絶え絶えに、這うように前進していました。どうやら早く走りすぎて、身体をこわし、しかし前へと進み続けていたようなのです。
カメはレースを続けました。自分のペースで進み続けました。
数日後、カメはゴールしました。自分の歩みで目標としていたゴールにたどり着きました。
後で聞いたところによると、ウサギは途中で息絶えたらしいのです。カメはウサギよりも遠くに来てしまいました。