その名との決別
ファミコンという名前を聞けば、いまだにほとんどの人が「任天堂のゲーム機のこと」と認識できるくらいに認知されているけれど、今の任天堂のゲーム機は、WiiとかWii Uなんて言うことに。
初代Walkmanが出てソニーは音楽文化に革命をもたらしたけれど、その後、デジタル化においてMDにうつつを抜かしている間に、あっという間にmp3を中心とした勢力に追い抜かれ、プレーヤーとしての名前は関しているものの、Walkman/ウォークマンは、過去の名前になっている感がある。少なくとも、携帯音楽プレーヤー市場を代表する名前にはなっていない。
同じような名前でDiscman、のちにCD Walkmanと銘打ったものもあったけれど、今時CDを持ち出してまで聞く人はまずいない。
一企業が、エポックメイキングな商品やサービスを打ち出すと、その後の似たような他社の商品も、最初の会社の名称で呼ばれることがある。例えば今でもたまに聞くのは「写メ」なんて言うのは「写メール」の名残。あれは、ボーダフォンが最初じゃなかったっけ?
商品カテゴリーの名前が決まらないうちに、一社が飛び出すと、その会社の商品名が、そのカテゴリー名に置き換わりやすい。ファミコン、ウォークマン等々。ビジネス戦略上、その商標を持っている会社は嫌うけれど、裏を返せば、それぐらい印象強く残っているということで、満更悪いわけではない。
カテゴリー名が決まった後で、その中で商品が他社より抜きんでていても、それはそれで実力があるわけだけれど、でも、廃れていくのは上記の霊よりもさらに速そうだ。「アクオス」なんてのがそうではないだろうか?
時代によっては、その商品カテゴリーごと消滅してしまう場合もある。「ワープロ専用機」と言ってすぐに想像できる人は、たぶん今の30代がギリギリではないだろうか?
文豪、書院、Rupo、オアシス。何の事だかわからない人は半分くらいいらっしゃるだろう。
本当にビジネスで一大ヒットを作りたいなら、そのビジネスカテゴリーを代替するような名前を持つくらいの、エポックメイキングな商品やサービスでなければならないということ。
ただし、そうした領域は、その商品が世に出るまでは存在していないがゆえに、開拓者としてまわりの強固な抵抗をはねのけ続けなければならない宿命にある。
そうして開拓して切り開いた分野だとしても、時代はそれを乗り越えていく。その時がその名前との決別の時。