映像がうつしてしまうもの

LINEが爆発的にはやったこともあってか、無料でのショートメッセージを送りあうアプリが花盛りの様相を呈している。
パソコンをちょっとお使いの方だと、LINE以前からそうしたチャットソフトはいくつもあった。いや、チャットといったテキストメッセージに限らず、パソコンの世界では、音声通話、テレビ電話が無料で使える、Skypeをはじめとする仕組みも完備されていたし、もちろん今でも使える。無料で。

昔から言われていることだけれど、「テレビ電話」は思ったほどはやらない/流行っていない。DoCoMoが、ケータイでテレビ電話通話ができることを売りにし、原宿の竹下通りでデモ機を用いて若者に面白さを伝えて広めようという努力をしているところを見たことがあるけれど、だからと言って若者に受けたという話を聞いたことはないし、まして中高年において、ケータイでテレビ電話を使っているという話は、あまり聞いたことがない。

ただし、一部の家族持ちには使われているという話を、少なくとも私の周りでは聞いたことがある。

たとえば単身赴任のお父さん。週に何度か、まだ小さな子供と話すために、パソコンでテレビ電話をする。子供たちも、電話で(音声だけで)お父さんと話ができるより、顔が見えた方がうれしいに違いない。
孫が生まれた新米おじいちゃん。だが、息子/娘夫婦は遠く離れたところで生活している。そうそうは会いに行けない。そんな時、テレビ電話で通話できれば、「子供」の顔ではなく、一番見たい「孫」の顔を、簡単に拝むことができる。

特に女性が言い訳として使う場合が多いとの印象を持っているのだけれど、テレビ電話に出るとなると、化粧を気にする、という方がいらっしゃる。もちろん、かなりカメラに近いところから映るのは事実。だが、たぶん「化粧」よりも、ライティングの方が重要なポイントを占めているのではないかと思う。いくらばっちり化粧をしたからと言って、ライティングが台無しでは、美しい顔もきれいに相手には映らない。

さらにさらに、私は、本当のポイント/障壁はこちらにあるのではないかと思っていることがある。
顔は“作れた”としても、その人が存在する周りの環境が一緒に写りこむこと。これこそが、テレビ電話を縁遠いものにしているのではないだろうか?
外出先から話をするならまだしも、まだそこまで状況が進んでいる社会ではない日本。となると、テレビ電話で落ち着いて会話をするには、自宅で、それもくつろいだ場所で、ということが少なくないと想像できる。となると、自分の部屋が、生活が映りこむことになる。
その部屋の散らかり具合、多少雑然とした具合を相手に気取られることを嫌っているんじゃないだろうか?
単身赴任のパパは、自宅の状況などわかりきったこと。いちいちきれいに片づけて取り繕う必要もない。孫の顔を見せるにも、いつも行き来している親類の家、家の中で多少荷物が拡げられていたとしても、いつも見る/見せている風景。今更取り繕う間柄ではない。

だから、何かしらを取り繕いたい関係、そういうことは隠しておきたい、粉飾したい関係の間で、いわゆるコミュニケーション手段として、映像込みのテレビ電話がもっと発展するためにはどうしたいのか?
たとえば、背景を簡単に除去できるといった仕組みがあれば、もう少し広まるんじゃないかな。いや、実はもうそういうソフトはあるし、私も使ったことはある。だけれど、万人がそういう機能をもっと簡単に使えるようになれば、実はテレビ電話ライフは、もっと広がるんじゃないだろうか?

「テレビ」が売れず、その付加価値向上のために「テレビ」にテレビ電話機能を付加して、何とか売り上げを上げようともくろんでいる家電業界の人を知っているけれど、もう少し、どうして使ってもらえていないかという理由に踏み込んだ方が、いいんじゃないのかな?