見たいものは、記録か記憶か

今どき、200万画素のデジタルカメラと聞いて、みなさんはどんな印象を持つだろう?

 

 画素数少なっ!

 トイカメラ

 3000円しないんじゃない?

 ケータイでも今どきそんな画素数じゃ…

 

では200万画素って、本当にしょぼいんだろうか?

 

 

ちょっとカメラからお話変わって。

もうすでにほとんどのご家庭では、液晶テレビに切り替わったであろう昨今。だけれど、そのテレビの実力としての画素数をご存知の方はどのくらいいらっしゃるのだろう?

 

以前のアナログ時代、いわゆるブラウン管テレビでは、NTSC、PALなどあるけれど、日本においてはその走査線の本数は525本。これに対しデジタル時代の現在、ハイビジョンでは走査線に相当する本数が1080本に増えている。そして横方向の画素数は1920、もしくは1440のものが主流だそうだ。

ということは、1440 x 1080、もしくは1920 x 1080。

 

ん?

 

 1440 x 1080 = 1555200

 1920 x 1080 = 2073600

 

ということは、今のハイビジョンと呼ばれているテレビで見ているのは、デジタルカメラの画素数に換算すると、約156万画素~207万画素ということになる。

 

「ハイビジョン」と言えば「きれいな画像」の代名詞!買った時期によってハイビジョン“級”とか、ハイビジョン“相当”なんて言葉でお茶を濁していたモデルをお使いの方もいらっしゃるかもしれないので、全員が全員そうだとは言い切れないところはあるのだけれど…。それにしてもたかだか200万画素ちょっと。

 

静止画(デジタルカメラ)の画素数と、動画(テレビ)の画素数とを直接比較することこそ乱暴であるのは承知の上。だが昨今では「自宅のテレビで、デジタルカメラで撮影した写真を見る」という行為もありえるだろう。

もちろん、高画素数の静止画を映し出す際に、さまざまなチューニングされたフィルターを通して、美しさを再現することに、各社のテレビも注力しているので、“…だから200万画素のカメラで十分”などというつもりはさらさらない。

さらに、印刷した場合では、サイズによるものの、やはり明らかに200万画素より、800万、1000万画素の方が、目が詰まった美しいプリントアウトになるのは間違いない事実だろう。

だけど、じゃあ200万画素の10倍もの画素が万人に必要な情報か?となるとそれはちょっと疑問だ。ただ単に見るだけならまだしも、データとして取り扱うには、大きければ大きいだけの負担がある。取り回しのしやすさと見栄えの美しさのトレードオフポイントがありそうに思う。

 

そのためには、デジタルカメラをどう使いたいのか、何で見るのか、どうやって保存するのか。もうすでに画素数のみで騙される人は少ないだろうと思うけれど、ほんとうに欲しいものは何なのか。画素数の高い映像?芸術性が高い映像?いやいや、芸術性が高くなくても孫と一緒に映せれば、お気に入りのペットが記録に残せれば、いつでも簡単にたくさん撮影できれば…。残したいと思った場面が簡単に残せること。

 

誰もが高精細の記録を残したいんじゃないんだと思うんだよ。楽しい記憶、うれしかった記憶、とんでもないハプニングの記憶を呼び起こしてくれる装置としての写真。「単なる記録」ではなく、「記憶のトリガーとしての記録」を、簡単に残してくれる装置。それが私の中でのカメラのポジション。