ジレンマ

もう10年以上前?に話題になった本、イノベーションのジレンマ

ちょっとした企業の管理職クラスなら、必須のビジネス読本になっているところも少なくないだろう。その後のシリーズも何冊も出ているみたいだし。

 

わかっていてさえ打ち破れないイノベーションのジレンマ。であるがゆえに、いかにしてこのジレンマから抜け出すかを必死で模索し、各企業はあがいてきた。特にバブル以降の日本経済の中で、発展できない企業、経済の中でもがき続けた。

 

他方、なかなか抜け駆けを許さない文化を持つ日本。産業界にしても、スポーツ業界にしても、周りの目を気にしながら自分の動きを決めるところがほとんど。であるがゆえに、業界自体がジレンマに陥って来たとしても、その中で「出る杭」になりたいと思う奇特な会社/経営者/代表がいなければ、業界は業界ごと沈む運命を待つことになる。

さらにそれらを後押ししている団体。特にお役所からの天下りで成立していたりする団体などであれば、そもそもそれらが管轄する業界の業績と直接リンクしていないところもあり、多少の危機感を持つことはあっても、なかなか“自分たちが変わらなければ”という肌で感じる痛みのごとき意識改革を実施していける、自分を切り刻んでいけるほどの決断ができる団体はそうはない。

 

…とすると、結局日本の中の斜陽業界は、業界を挙げて“イノベーションのジレンマ”に取り込まれているにも等しかったりしないだろうか。変わらなければならないのはたぶん“日本”。日本の中の業界体質であり、それを構成する様々な構成要素たる組織や集合、そしてそこに属する個人が変わらないことには変わらない/変われない。

時に政治家が変えてくれると期待する向きもあるけれど、“あなた”だけは変わらずに、周りが変わることはたぶんない。私だけは変わらずに…と思っている人がごまんといる社会こそ、変わらない社会なのだから。

 

やばいと思った瞬間に、たとえ一時は沈むことが明白であったとしても踏み出さなければならないというジレンマ。しかし、自分の周りを見回しているだけでは、それは自分だけが沈んでいくという決断をとったように見えるジレンマ。でも、より大きく船全体を俯瞰して見ることができていれば、明らかに、今少しだけ沈んだとしても踏み出したほうがいいかもしれないジレンマ。

今ならまわりのパニックに巻き込まれずに、ゆっくりと準備することができるかもしれない。