親から伝わるもの
親の本棚から本を盗み見るという行為。
漫画にせよ小説にせよ雑誌にせよ、親が読んでいた本が子供に与えていた影響というのは、小さくなかったのではないだろうか?
ところが、これからはそうした本は自宅の本棚にあるのではなく、親のガジェットの中/PCの中に、スキャンされたり、データとして購入されたものとして格納されていく事が増えていくんだろう。だからこれからは多くの場合、子供はそうした本/データを目にすることすらなく、もちろん手にすることすらなく、その中身をチラチラと眺める機会がどんどん少なくなっていく。
親自身の世代は、意識して、自分たちの考え方、美しいと思うもの、知っておくとよいと思う知識等々として集めた手段としての知の形のひとつが、たぶん「本」というものだったはずなのだけれど、それがどんなものかが「家の中にいる」だけで伝承されてきたところが、今後はそれを子供たちは自分たちの力だけでは触れる機会を奪われていくことになる。
もちろん、今までもすべての親がそんなに本に親しんでいなかったという家庭もあるだろうし、逆に、とてつもなく本を読んでいた、図書館のような書庫を持つ家庭もあっただろう。
でもこれからそうしたものが、どんどんとデジタルデータ化されることにより、子供たちがそれに直接触れる機会が奪われていく。意識して教育を考えていく親に育てられる子供と、そうでない親に育てられる子供で、大きな違いが生まれるかもしれない。
もちろん、そうして本という情報に触れる機会が減るのに変わり、それまでの時代にはなかった、ゲームやネットから、直接得る情報のシャワーを浴びて育っていく子供たちの世代がもうやってきているんだろう。
そうした世代が作り上げる世界、創造する未来がどんな形になるのかは、とても興味深い。