識者は黙ってやっている

ある方のお話しを伺う機会があり、その方の所属する会社の実情を聞いた。

別に今回に限らないけれど、その方も、会社としてのレベルが低い、仕事の遂行能力が低いなんてことを憂う発言が出てくる。社員のレベルが低いから、仕事遂行能力が低いからなどと言う言葉も端々に出る。

 

ある種の幻想かもしれない。いい人を集めれば、能力の高い人を集めればいい会社になる。これもあり得るだろう。しかしよく比喩に使われる通り、じゃあある一通りの才能をもつ人を集めるだけで済むのか?というと、決してそうはいかない。

 

ホームランバッターだけを集めた球団があったとして、そこが必ずぶっちぎりで毎年優勝する…と考える人はいないだろう。サッカーでも多分そうで、得点率の高いフォワードだけで11人固めたとして勝てるチームに成るか?というと、きっとそうではないはずで。

 

その組織として、そのチームとして、持ち場持ち場の役割がある。その役割として高い能力を発揮できるようにすること、その持ち場に求める力を明確にすることで、その人の働く能力が期待される。

でもそれだけじゃいけない。そうして持ち場持ち場での役目を果たしたうえで、さて全員で成し遂げるべきことは?ということが分かっていないと、けっきょくそれは個を集めたに過ぎない。その個が一塊の一つになるためには、大きな目標とか、大きな夢が必要になる。それはいわば、個と個を固めるための増結剤のような役目を果たす。

 

それでも、個の力が弱いと、そこが弱いリンクになりえることもある。「鎖」は弱い部分から千切れるもの。だからそこを強化する。と、今度は相対的に弱くなった別のところが切れやすくなる。そしてそこを強化する。

そうしているうちに、個々の鎖のひとつひとつは太くなり、強くなる。全体として一塊となり、強固な結びつきを力として発揮する。いきなり強い鎖がほしいなら「全部を入れ替える」しかないが、それでも一つ一つの鎖の輪をメンテナンスするつもりがなければ、いつもいつも層取り換えする以外につよいものを手にする手法はなくなる。

 

強くなるって意外と地味なんだよね。そして、そうして強くなっているチームこそが言う。

「いやぁ?別に大して特別なことはしていないんですけどね」