味が出るまで
もうすでにCDを購入して…という時代ではなくなったんだろう。
欲しいな!と思った楽曲は、スマホを通じてその場で購入。
聞きたいと思った時が聞き時だし、当然そのために、どこでも買えるというサービスが作り上げられた。
昔はと言うと、アルバムをお小遣いをためて買ったりした。レンタルが出る以前の話。その後にレンタルという形態のビジネスが出始めたけれど、基本的にはまだ同じだった。
アルバムを買ったりレンタルしたりするけれど、購入したアルバムを、もしくはレンタルしてカセットにダビングをしたアルバムを、繰り返し繰り返し何度も聞きこむ。
好きな曲だけでできているとは限らないアルバム。好きな曲を繰り返し聞くこともするけれど、そこに何度も出てくる、当初は気にも留めなかったあの曲が、いつしか耳に馴染んでくる/詩が心に響いてくる。そうしていつしか、「その曲」が持つ力で、ファンの間でその楽曲が珠玉の1曲、なんてことになったりする。
でも今じゃ、そもそも「その1曲」しか買わなかったり。それはCMで使われたり、ドラマや映画で使われたり。そうしたところで使われない曲とは、どこで出会うのかな?「味が出るまで噛んでいた」からこそ、はじめてその曲の味が分かった、すぐには分からなかった曲でも味わい深いことが理解されたのに、そうでない曲は生き残る機会はどこになるんだろう?