寓話

良いアイデアを出せと言う。だからと言って、一つ一つ出されたアイデアは、これはだめだ、あれはちょっと…と言っているようでは、そもそも「出そう」というモチベーションを下げるのみ。だから、「ブレーンストーミング」の最初は、少なくともすべてを受け入れる。どんな些細なアイデアでも、どんなつまらないものでも、とりあえず全部受け止める。対して難しくはない、が、これはファシリテーションのテクニックだ。

 

最初からビシバシアイデアが出てくるようなメンバーならまだしも、そもそも日頃からそういうことに慣れていないメンバーなら、いくらなんでも出してもいいと言われたところで、最初からどんどんとアイデアは出ない。だから鼓舞する。何でもいいですよ、つまらないモノなんて何もない。どんなビッグヒットでも、最初からいいアイデアだとわかってやっていたとは限らないんだから…とか何とか言いながら。

調子づく人はすぐにエンジンがかかる。些細な差をどんどんと並べ立てる。が、それも重要じゃないとは言わないが、できれば大きく視点の違うアイデアが欲しい。だからできるだけみんなから幅広く取り寄せる。

 

無駄なものをいっぱい出すなんてそれこそ時間の無駄だ、良いものを、質の高いものを出すんだ。

いまさらそんなことを言い出す人は少ないと思うけれど、そもそも「質の高い事」だけを言い続けるのは難しい、というか、無理だ。262の法則とかそれこそいろいろあるけれど、どんなものでも一般的に優れているのは、その中の2割程度に過ぎない。だからこそ数を出すことで、その2割が自分たちに合致するモノを拾い上げたい。だから数を出す。質が欲しけりゃ数を打てということだ。
そうしている中からいいものが見つかる。いわゆる量⇒質転換というわけだ。
といっても、一目見て質のいいものというのはこれまた見つかりにくく、磨いて磨いてやっと光り出すものがほとんど。

 

磨かずにすぐにいいものだとわかる、「金の卵を産むニワトリ」になれとマネジメントは叱咤激励するけれど、ニワトリだって、ストレスを与えれば卵を産まなくなるし、疲弊すれば病気にもなる。
そもそも、金の卵を産むニワトリ、だとして扱ってこなければ、だれもいいものを産もうなんてしないでしょうし。北風戦略か太陽戦略。追い詰められて焦ってどっちを選んでいるか。

 

子供じゃなくて、最近の大人こそ、寓話を読み直したほうがいいんじゃないかな。