違いがわかる

ひところネットを騒がしていた「自炊」という言葉。日々の食事を自分で煮炊きするというそれではなく、雑誌や書籍を解体、分解し、スキャンして電子データとして持ち歩きたい、物理的スペースをセーブしたいといったいくつかの要望を満たすことができた行為。

いくつかのメーカーも電子書籍リーダーを作成して何とか覇権を握ろうとしていたところもあったようだけれど、やはり結果的には、Amazonキンドルという黒船によって大筋の流れが決まった感がある。

 

ところで、「電子書籍」というのはなんだろうか?書籍をスキャンした電子データ状のものすべてが「電子書籍」なんだろうか?
そもそもその部分がきちんと整理されている、共通理解が得られているという所からスタートしなければ、話はかみ合わなくなるし、議論の論点がずれることになりそうだ。

 

こんなぐらいのレベルに分けられないだろうか?
1) 単に画像化したのみ;いわゆるスキャナにかけただけ。
2) 1)にプラスして、OCRもかけた。ただし、整合性が取れていないところもある。自動認識の範囲まで。だから単語として検索できない部分も、当然あり得る。
3) 2)にプラスして、文書としての文字列をきちんと整えた。ゆえに、どの文章、文字列においても検索が可能。
4) 3)と同列になりそうだが、画像もきちんと見直した。特にグラビア的写真や、精緻な図表は、意味の通る、見る価値のあるものにそこだけきちんと差し替える。
5) 文章中の、たとえば脚注や関連ページを、きちんとリンクとしてつなぐ。いわゆるハイパーテキスト状況を生み出し、本としての1冊で完結する形のみならず、時には外部のリンクも有益になっていたりする。
6) いわゆるインタラクティブな反応を取り込む。動画や動くイラスト、一昔前に言われたマルチメディア的要素がきちんと盛り込まれ、意味ある形でパッケージングされている。

 

勝手に分けてみたが、1)をイメージしている人と6)をイメージしている人が、一緒にビジネスの話をしたところで話がかみ合わないのは当然の事。また、それら操作性を考えると、大き目のタブレットPC的なもので見てもらうことをイメージしている人と、昨今のスマートホン前提の人では、やはりターゲット層、ターゲットシチュエーションなどなど、全く違う。


…というわけで今更言うまでもなく、
電子書籍」とは、単純に紙の本をスキャンしたもの、とは違う次元に入ってきているはず。このイメージを越えられないことには、いわゆる今までの出版業界は、レガシーメディアの会社になるのかもしれない。

それ、電子書籍ですかね?