QCDの視点
仕事をするうえで、必ずと言っていいほど上司から言われるのが、QCDの視点。それは、品質のQとコストのCとデリバリー(スケジュール)のD。
日本の高度経済成長においては、そもそも日本の賃金が安かったこともあり、それをある意味テコにして、日本人の器用さ、品質追及をつかって、世界に冠たる経済国家を作り上げてきた。それが1970年代から80年代の日本の事実上の「ピーク」。そうして商品やサービスが売れることにより、給与が上がる、だから頑張れる。…という、ある意味良いサイクルで回っていたのが失速しだしたのが1990年代。いわゆるバブル崩壊。
それに追いつけ追い越せ?の勢いで猛進してきたのが中国なのかな。当時の日本に比してはるかに安い賃金で、たぶん当時は日本人ほどの器用さはなかったかもしれないけれど、とにかく安さで勝負することで、世界の生産拠点になりあがっていった。いわば、上記QCDの、人件費Cが低いことをテコにしてぐいぐいと出てこれたという事。
もちろんバブルが崩壊したと言っても日本の企業もかなりあがいた。新しい技術開発、サービス開発などに力を入れるものの、そもそも、投資した半分も成功するわけがない。…という事が分かっているからこそ、そもそも投資額を抑えようとする。しかしそこを抑えてしまうと、「もうあと少しお金があればできたかもしれない事」ができないままで終わってしまう。こうして投資が無駄金になり、開発できた技術も実を結ばず。
こうなってくるとQCDで勝負するためには、Qを下げると売れなくなる。Dが遅れると世間から見れば時代遅れ。なので高くなりすぎたCを下げる方向で動かざるを得ない。だがどこを下げるのか。無駄金がかかりすぎている(?)人件費を下げよう…。だが明示的にガツンと下げるわけにはいかない。となると、今の賃金で今以上の仕事をしてもらって、「各個人の効率を上げてもらう」形で、下げるしかないだろう…と。とは言え、人間でできる作業は限界がある。となれば、結果的に、どこに手を抜けるのか、どこの品質を下げてもいまの価格を維持できるかという、ある意味マイナス的行動にならざるを得ない。ある企業では安全品質を切り詰め、ある企業では原価品質を切り下げ…。
負のサイクルが回り出す。
こんな状況でモチベーションが上がるわけもなく。日々、一市民は家計防衛の構えを取らざるを得ない。景気が盛り上がるイメージが持てない。出てくるものは悪くなった印象がおおきくなり、さらに買いたいものが減っていく。マイナス方向での攻防だ。
それに対して中国は?すでに中国の人件費自体がかなり上がってしまっているので、もしかすると現在は、ミャンマーやマレーシア、ベトナムあたりに移ってしまっている感があるけれど、彼らのある種のマインドは、いかに品質をあげるか。今の安い人件費でさらに品質が良いものなら、もう少し値段をあげられる。そうすると賃金だって上がる可能性が見えてくる。少しいい暮らし、少し便利な暮らしに近づける。まさに日本の1950年代、60年代の勢いそのままなのではないだろうか。ポジティブ方向への攻防。
人々の勢いとして、ネガティブ方向に動いているものと、ポジティブ方向へ動いているものと、いわずもがな。なかなか厳しい戦いになるのは必然。であるからこそ、同一線上の価値基準では負けが目に見えていると言っても過言ではない。
だからと言って、「世界線」をパツンと切り替えられほど便利ではないからこそ、人々は疲弊し、日々、満員電車に揺られるのだけれど。
でも、世界の「先進国」では、インフレしないのがトレンドかもね。欲望も限界を迎えるのか?