護送船団方式

かつて、日本の金融関係企業に向けては「護送船団方式」と呼ばれる、手厚い保護があり。(その理由は、お金を扱う仕事であるのだから、それなりに対価をきちんと払わなければ、それこそ経済の根幹がゆがむ…などといった理由だったかと思いますが、正確には知りませんけど)であるがゆえに、その企業はそう簡単にはつぶれない、給料もいい…ということで新卒の学生さんたちからは、金融系企業、銀行等々は憧れの企業になっていたわけで。

 

しかしそれもバブルの崩壊、平成に入って10年とたたずに、護送船団方式は解体され、結果として、日本の金融は「大掃除」を必要とすることになる。平成の記録映像の一つとして出てくる銀行や証券会社の破綻の謝罪シーンはまさにそれ。

 

ただ、そうして「護送船団」として守られてきたのは、果たして銀行という法人だけだったのだろうか?と。実はその他の会社の会社員たちも、それなりの保護によって弱ってしまっていたところがあるのではないだろうか?そして近年、まさにこの、会社員、正社員向けの護送船団方式が崩壊しようとしているのではないだろうか、と。

 

それは、日本の企業における正社員の解雇の難しさだ。余程の企業側の切迫した理由がなければ、解雇が認められないという話。であるがゆえに、企業から解雇通知を受けたとしても、会社を訴えてしがみつく者も。

もちろん、いわれなき理由で解雇通知を受けた場合には、断固として戦うべきだと思う。だが、その一方で、その他一般職員の一部はこう思っていないだろうか?一度こうして「正社員」になったのだから、これは事実上の既得権。これを絶対に手放さず、この権利で、俺の人生を守り抜くのだ(たとえ自分にさほど能力がなくとも…)。こんな先行きの見えない世の中、この会社の甘い蜜を吸い尽くさねば…と考えている人々はいないだろうか?

 

企業は企業で、法に触れない範囲で手を打ち始める。それは、何とか「工数」に対する予算を低く抑えるためには、「正社員」を減らして、「非正規社員化」させることで、工賃を下げ、会社の経費を削減する方向に動く。これがあからさまに社会問題となりはじめてしまったのが、この10年、15年の経緯ではないだろうか?

 

企業だけが悪いとは言わない。政府の施策も悪いわけだ。だが、個人が会社に「寄生」して、会社が生き残れるほど世界経済は甘くはない。個人は個人で成長が必要で、それがきちんと促されていなかった事、意識してこなかった事にも問題があると思うのだ。これは会社として、会社の上層部として、そして社員として、とそれぞれにおいてだろう。

 

奇しくも、たぶん、それまでは心の中で思っていただけかもしれないとは思うのだが、とうとう、経団連の会長が、「終身雇用は続けられない」などと言い出している。いや、それはそれで、「今突然」言い出されても、あんたがたはそれを次の仕組みに作り替えていく責務を持っているのに、誰かに丸投げなのか?と、個人的には不満たらたらなのだが。

タイミングに、仕組みに、制度に翻弄されざるを得ない。これが景気の良い場合ならばそれなりにやり過ごせても、不景気の時には特に…。「日本」という会社を見限る人が出てもおかしくない状況では?