国家間でのジレンマ

ビジネス書には様々な有名なものがある。20年ほど前?に流行った一冊「イノベーションのジレンマ」というのをご存知の方もいらっしゃることだろう。

詳しくは中身を読んでいただくのがもっとも近道なのだけれど、ハードディスク製造業者が、現行技術をどこまで使い続けるべきか、新しい技術に乗り換えられないのか、といったことで、抜きつ抜かれつの競争が生み出されている状況を分析した、非常に面白い書籍だ。その後、それに続いて確か数冊ほど続編も出たのではないだろうか。

 

上記は産業界、いわゆるメーカーにおける話、企業間として書かれていたのだけれど、実際には、たぶん、「国」レベルにおいて起きている事でも。

 

日本は、豊かな経済的バックグラウンドに育まれて、昭和の時代に有線電話が非常に普及をした。その後、1990年代後半に入り、携帯電話の普及によって、一気にそちらにシフトしたという歴史がある。

だが、1990年代でも、たとえば発展途上国などにおいては、当然有線電話網がきちんと整備されていない国は多くあった。だがそれらの国のいくつかは、「有線電話網を作る」というステップを飛び越え、いきなり国民全体に、携帯電話の普及へと舵を切ったところがある。そう、そんな順番に進める必要すらない。インフラを作る費用など必要ないのだ。

こうすることによって、一気に通信事情が改善されたり、先進国総統に追いついていく。まさにイノベーションだ。

 

昨今はやり始めたQRコード決済もそうだ。

日本はというと、「日本銀行券」という現金の信用度が高く、クレジットカード決済よりも現金決済が染みついていた。これにより、電子決済への移行が、いまだになかなか進んでいない状況だ。

それに比べ、国によっては「お札」が信用できない、偽札の可能性を疑わなければならない国もある。こういう国ではクレジットカード決済が求めらることもあるが、やはり手数料問題もある。さらに、システム設置の費用なども重要なポイント。そこに出てきたのがQRコード決済。これであれば、クレジットカード決済を、より簡便に、システムを設置することなく、QRコードとして印刷した紙が1枚あれば済むことになる。

 

日本でもやっとそうした考え方が始まり、各決済手段系の会社が後押しのために何億ものインセンティブをばらまいているが、そもそも現金決済が強いがために、なかなかそちらになびかない。
どうやら、今回の消費税増税を機に、そちらになびきそうな機運もないではないけれど、「現金でいいじゃん」という、それまでの慣習に阻まれて、決済イノベーションが滞っている…というのが日本の現状。

 

とは言え、たぶん世代交代が明確に起きるであろう30年もたてばそちらになびくのは必然だろうけれど、たぶんそのころには他の国は、さらにその次へと進んでいるはず。日本がそうした「イノベーション後進国」に成り下がろうとしている現状。老人世帯が増え、変えたくない、変わりたくない人々が支配する国になろうとしている。
やばい気がしている。