ここ最近、言わなくなった事

昔に比べてあまり聞く機会が減った言説は、「年金は払い損だ」という事。言い換えれば、「年金として、支払ったものに対して、戻りが少ない(から、加入しても損だ)。」という事を言わなくなり始めていないだろうか。

 

年金財政は、日本という国が抱える根源的な問題の一つではあるし、最近も5年に一度のそれら未来の状況推計が出たが、お察しの通り、5年前から財政状況は(当たり前だが)何の進展も変化もないという現状。

ただ年金環境に関しては、この30年ほどで、明らかに変化があったことがある。それは平均寿命の延びではないだろうか。正確には経済の伸び以上の寿命と、年金受給世帯人口比の伸び、か。

 

昔なら、70代でなくなることを想定されていたかと思うけれども、昨今は、男女ともに平均寿命は80歳代。「平均寿命」自体は、0歳で生まれたての子供がいくつまで生きる…という指標であるため、60代70代でご存命の方ともなると、80はおろか、90、100すら見えてくる。であるからこそ、年金の設計なども90歳をターゲットに計算しなおしていたりする。

 

そう、あきらかに、「受給期間」が以前に比べて伸びているため、結果的に、「もらい損」になりにくくなってきたというのが、ここ最近の話。
であるからこそ、年金財政状況に破綻をきたす可能性が上がっているともいえるため、「受給開始年齢」をさらに上げて、68歳説、70歳説が検討されているとも聞く。…となるとたぶん再び出るのだろうか、もらい損だという説が。

 

解決するやり方はいくつかあるのだろうけれど、どれも現実味は非常に薄く。突然、年金世代の人口が(ウイルスとか戦争等々で)激減するとか、逆に供給側の労働者人口が、突然の人口爆発で激増する…という事くらいしかありえず、それ以外としては、給付期間を下げるという手ぐらいしかないのが現実。急激なインフレ…というのも無くはないが、それは年金世帯のみならず、全世帯に多大なるダメージを与えすぎる可能性が。

 

だからと言って、これからの世界において、「人口数こそが力」であり続ける明るい未来…とは考えにくい。今でこそ、人口が多い国や地域の経済力が上がってきているけれど、いずれにせよ無限にすそ野が広がるわけはない。となれば、いずれ、現在の日本が抱える年金問題総統の課題が起きるのは事実。逆に言えば、「人口数こそが大きな負債」になる可能性すらあり得る社会が来る可能性は、決して否定できないと思う。そう、メリットはデメリットでもあり、その逆もまた真なり。

 

とは言え、日本政府の「100年安心、年金プラン」と銘打ったのはあまりに無責任すぎた。とは言えいかに個人で、個別に対策を打てるのか。といったところで、根本的解決策などないのだが。こういう、無能な政府、政権によって、誤った国の方向性で進められた時代に生きなければいけない者は、民主主義の変更の遅さ、方向転換のノロさを恨む人も出るだろう。時代に翻弄されざるを得ないのだが。